在留資格 「経営管理」

 「横浜のアオヤギ行政書士事務所」が入管法別表第一の二の在留資格「経営・管理」について解説いたします。 2015年4月から、在留資格「経営・管理」がスタートしました。 日本国内企業において事業の経営・管理活動を行う外国人を広く迎え入れることができるよう、従来の「投資・経営」の在留資格の名称を「経営・管理」に改め、これまでの外国資本との結びつきの要件をなくしました。 これにより、国内資本企業の経営・管理を行うことも同在留資格によってできるようになりました。

 ご質問やご意見は下記フォームに記載のうえ、メールにて送信下さい。 なお、返信希望のご質問には、貴メールアドレスの記載をお忘れなく。

 

外国人が我が国にて事業を起こし、又は既存の事業の経営又は管理に従事する場合、その活動は「経営・管理」の在留資格に該当することとなりますが、同在留資格については、出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(以下「基準省令」という。)において「事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されている」又は「事業を営むための事業所が本邦に存在すること」とする基準が定められているところ、ベンチャー企業などとして興された企業については、設立当初は規模が小さいことや少人数での事業運営が可能であること等から、住居としても使用している施設を事業所と定めて事業を行う場合等があります。 また、在留期間の更新許可申請等において、当該事業の経営・管理という在留活動を継続して行うことができるかという観点から、赤字決算等が疑問を生ぜしめる場合があり得る反面、通常の企業活動の中でも、諸般の事情により赤字決算となっていても在留活動の継続性に支障はない場合も想定されます。
 従来。この「事業所の確保存在)」及び「事業の継続性」の認定をするに当たって、その基準が不透明であるとの指摘があったことから以下のとおり入国管理局は、ガイドラインを示しています。

1.事業所の確保について

総務省が定める日本標準産業分類一般原則第二項において、事業所については次のように定義されています。                                経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われてい

ること                                       ②財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的に行われていること

 

以上の二点を満たしている場合には、基準省令の「事業所の確保(存在)」に適合しているものと認められるところ、「経営・管理」の在留資格に係る活動については、事業が継続的に運営されることが求められることから、月単位の短期間賃貸スペース等を利用したり、容易に処分可能な屋台等を利用したりする場合には、基準省令の要件に適合しているとは認められません。

 事業所については。賃貸物件が一般的であるところ。当該物件に係る賃貸借契約においてその使用目的を事業用、店舗、事務所等事業目的であることを明らかにし、賃貸借契約者についても当該法人等の名義とし、当該法人等による使用であることを明確にすることが必要です。 ただし、住居として賃借している物件の一部を使用して事業が運営されるような場合には、住居目的以外での使用を貸主が認めていること(事業所として借主と当該法人の間で転貸借されることにつき、貸主が同意していること。)、借主も当該法人が事業所として使用することを認めていること、当該法人が事業を行う設備等を備えた事業目的占有の部屋を有していること、当該物件に係る公共料金等の共用費用の支払に関する取決めが明確になっていること及び看板類似の社会的標識を掲げていることを必要とします。

なお、インキュベーター(経営アドバイス,企業運営に必要なビジネスサービス等への橋渡しを行う団体・組織)が支援している場合で、申請人から当該事業所に係る使用承諾書等の提出があったときは、(独)日本貿易振興機構(JETRO)対日投資ビジネスサポートセンター(IBSC)その他インキュベーションオフィス等の一時的な住所又は事業所であって、起業支援を目的に一時的に事業用オフィスとして貸与されているものの確保をもって,基準省令にある「事業所の確保(存在)」の要件に適合しているものとして取り扱うこととします。

参考事例

「住居」を事業所として「経営・管理」の在留資格に係る入国・在留申請の許否に係る事例については、以下のとおりです

事例1

Aは、本邦において個人経営の飲食店を営むとして在留資格変更申請を行ったが、事務所とされる物件に係る賃貸借契約における使用目的が「住居」とされていたものの、貸主との間で「会社の事務所」として使用することを認めるとする特約を交わしており、事業所が確保されていると認められたもの


事例2

Bは、本邦において水産物の輸出入及び加工販売業を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったところ、本店が役員自宅である一方、支社として商工会所有の物件を賃借していたことから、事業所が確保されていると認められたもの


事例3

Cは、本邦において株式会社を設立し、販売事業を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが、会社事務所と住居部分の入り口は別となっており、事務所入り口には、会社名を表す標識が設置されていた。 また、事務所にはパソコン、電話、事務机、コピー機等の事務機器が設置されるなど事業が営まれていることが確認され、事業所が確保されていると認められたもの。


事例4

Dは、本邦において有限会社を設立し、当該法人の事業経営に従事するとして在留期間更新許可申請を行ったが、事業所がDの居宅と思われたことから調査したところ、郵便受け、玄関には事業所の所在を明らかにする標識等はなく、室内においても、事業運営に必要な設備・備品等は設置されておらず、従業員の給与簿・出勤簿も存在せず、室内には日常生活品が有るのみで事業所が確保されているとは認められなかったもの


事例5

Eは、本邦において有限会社を設立し、総販売代理店を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが、提出された資料から事業所が住居であると思われ、調査したところ、2階建てアパートで郵便受け、玄関には社名を表す標識等はなかったもの。 また、居宅内も事務機器等は設置されておらず、家具等の一般日常生活を営む備品のみであったことから、事業所が確保されているとは認められなかったもの


事例6

Fは、本邦において有限会社を設立し、設計会社を営むとして在留資格変更許可申請を行ったが、提出された資料から事業所が法人名義でも経営者の名義でもなく従業員名義であり同従業員の住居として使用されていたこと、当該施設の光熱費の支払いも同従業員名義であったこと及び当該物件を住居目的以外での使用することの貸主の同意が確認できなかったことから、事業所が確保されているとは認められなかったもの


2事業の継続性について

事業活動においては様々な要因で赤字決算となり得るところ、当該事業の継続性については、今後の事業活動が確実に行われることが見込まれることが必要です。 他方で、単年度の決算状況を重視するのではなく、貸借状況等も含めて総合的に判断することが必要であることから、直近二期の決算状況により次のとおり取り扱うこととします。        1直近期又は直近期前期において売上総利益がある場合

a直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合

 直近期において当期純利益があり同期末において剰余金がある場合には、事業の継続性

 に問題はありません。 また、直近期において当期純損失となったとしても、剰余金が 

 減少したのみで欠損金とまでならないものであれば、当該事業を継続する上で重大な影

 響を及ぼすとまでは認められないことから、この場合においても事業の継続性があると

 認められます。 債務超過となった場合、一般的には企業としての信用力が低下し、事 

 業の存続が危ぶまれる状況となっていることから、事業の継続性を認め難いものです 

 が、債務超過が1年以上継続していない場合に限り、1年以内に具体的な改善(債務超

 過の状態でなくなることをいう。)の見通しがあることを前提として事業の継続性を認 

 めることとします。
  具体的には、直近期末において債務超過ですが、直近期前期末では債務超過となってい 

 ない場合には、中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認めら 

 れる公的資格を有する第三者が、改善の見通し(1年以内に債務超過の状態でなくなる 

 ことの見通しを含む。)について評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載され

 ているものに限る。)の提出を申請者に求めることとし、当該書面を参考として事業の

 継続性を判断することとします。
  したがって、直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合には、

 事業の継続性があると認められます。


 b直近期末において欠損金がある場合

ア直近期末において債務超過となっていない場合

 事業計画、資金調達等の状況により、将来にわたって事業の継続が見込まれる可能性を 

 考慮し、今後1年間の事業計画書及び予想収益を示した資料の提出を求めることとし、

 事業が行われていることに疑義があるなどの場合を除いて、原則として事業の継続性が

 あると認められます。 ただし、当該資料の内容によっては、中小企業診断士や公認会

 計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が評価を

 行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)の提出をさらに求

 める場合もあります。

イ直近期末において債務超過であるが、直近期前期末では債務超過となっていない場合

ウ直近期末及び直近期前期末ともに債務超過である場合

 債務超過となって1年以上経過しても債務超過の状態でなくならなかったときは、事業

 の存続について厳しい財務状況が続いていること及び1年間での十分な改善がなされて

 いないことから、事業の継続性があるとは認められません。


2直近期及び直近期前期において共に売上総利益がない場合

企業の主たる業務において売上高が売上原価を下回るということは、通常の企業活動を 行っているものとは認められず、仮に営業外損益、特別損益により利益を確保したとしても、それが本来の業務から生じているものではありません。 単期に特別な事情から売上総利益がない場合があることも想定されるところ、二期連続して売上総利益がないということは当該企業が主たる業務を継続的に行える能力を有しているとは認められません。 したがって、この場合には事業の継続性があるとは認められません

 在留資格「経営・管理」の許可基準
(a) 事業経営の場合

. 年間500万円以上の投資がされていること                                                            . 事業営むための事業所・店舗・施設の確保がされていること                                       . 経営者以外に日本に居住する者の常勤社員2名以上を雇用すること
(b) 外国人経営者に代わって経営管理業務をする場合                     .事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院において経営又は管理にかかる科目を専攻した期間を含む)                              .日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。