行旅死亡人

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 行旅死亡人とは、名前も住所も分からず、かつ遺体を引き取る人もいない死者のことです。 イメージとしてはいわゆる「行き倒れ」が分かりやすいですが、そうでない場合も多くあります。

 

   行旅死亡人の定義やその扱いについては、「行旅病人行旅死亡人取扱法」(明治32年制定)に詳細に定められています。 それによると行旅死亡人とは「行死亡シ引取者ナキ者」、つまり行)の途中で死亡し、遺体を引き取ってくれる人がいない者のことです。 またこれに準ずるものとして「住所、居所若ハ氏名知レス且引取者ナキ死亡」も行旅死亡人とみなす。すなわち行中であるという要件は必ずしも不要なのです。

 行旅死亡人が出ると、まず発見された市町村において死亡時の状況(時間、場所など)、外見上の特徴などの事項を記載した官報を発行するとともに遺留品中の現・有価(足りなければ市町村お金、つまり税で遺体を埋葬または火葬します。 もし死者の相続人あるいは扶養義務を有する人明らかになった場合には、それらの人が費用を弁償することになります。 最後までそういった縁者が出てこない場合には市町村遺留品の売却益を弁償に充て、それでも足りない場合都道府県に請することができます    

 

行旅死亡人の例

①行き倒れの人

②白骨化、焼損、死蝋、遺体の一部のみ(例えば頭蓋のみとか、上にてから下のみ漂流

 中)発見などにより身元確認ができなかった遺体。

③身元引受人のいない死者(例えば独居老人の孤独死)

④遺体の引受けを拒否された死者(たとえ身元が分かっても、「関わりたくない」、「勝手に

 出て行って死んだら引き取れなんて理」といった引受け側の事情によって引受け拒否す

 る事例があります)

⑤災害による犠牲者(具体例としては東日本大震災津波によるとみられる犠牲者)

⑥遺跡から発掘された人ミイラ

⑦意図して遺棄されその死亡に至った、つまり捨て子市町村長によって本籍と氏名

 を与えられたのち、上の方法で取り扱われる)戸籍法第57条⇓参照。

⑧密航に失敗し死亡した人、外から流れ着いてきた死者(具体例としては北朝鮮から流れ着

 いてきた遺体)

 

戸籍法第57条 棄児を発見した者又は棄児発見の申告を受けた警察官は、24時間以内にその
  旨を市町村長に申し出なければならない。

 前項の申出があつたときは、市町村長は、氏名をつけ、本籍を定め、且つ、附属品、発
  見の場所、年月日時その他の状況並びに氏名、男女の別、出生の推定年月日及び本籍を
  調書に記載しなければならない。その調書は、これを届書とみなす。 

行旅死亡人の氏名と本籍
 棄児が発見された場合、発見の報告を受けた市町村長は戸籍法第57に基づき氏名と本籍を与えることとされますが、行旅死亡人のように、遺体にて発見された場合も同様の措置が取られ戸籍法第58条に基づく)、その事実並びに与えられた氏名と本籍が行旅死亡人の公告中に記載されることがあります。