認知症高齢者の行方不明者の実態

 「横浜のアオヤギ行政書士事務所認知症行方不明の実態について解説します、ご質問、ご意見は下のフォームに記載のうえ、メールにて送信下さい。 なお、返信希望のご質問は、貴メールアドレスの記載をお忘れなく。 

 

 2012年、1年間に認知症やその疑いがある人が徘徊などで行方不明になったケースについて、行方不明になったとして警察に届けられた人は、全国で延べ9607人に上ります。 このうち、死亡が確認された人は351人。 その年の末の時点でも行方不明のままの人も208人いました。 2013年には、13000人に急増しています。
 警察への届出(2012年)はいずれも延べ人数で、家族などから通報があれば原則受け付けている大阪が最も多く2076人、次いで兵庫が1146人に上り、最も少ない長崎で7人、山梨が8人と大きな開きがありました。 正式な届け出前に保護されたり、死亡が確認されたりする人もいるほか、神奈川、千葉、埼玉の3つの警察本部ではいち早く捜索を行うため、正式な届け出前に電話などでの連絡と同時に一時的所在不明者として受理する制度もあり、実際の死者や行方不明者の数はさらに多いとみられます。

 

国の対策

 厚生労働省は認知症になっても、出来る限り、住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、訪問介護や訪問看護のサービスの充実や、グループホームサービス付きの高齢者住宅(今後60万戸作る計画)などの施設の整備を進めています。 2012年には「オレンジプラン」という認知症対策の5か年計画を初めて作りました。 しかし、国の対策が増え続ける認知症の人を十分に支えることが出来ていないのが実態です。 1人で暮らす認知症の高齢者を支えるための人材や施設が、国の政策どおりにはまだ整っていません。 早急に対策を考え、問題を解決する必要があるのですが、借金大国で少子化の状況で、可能でしょうか?

 

認知症老人のリスク

 2007年愛知県で、認知症の91歳の男性が列車にはねられて死亡した事故がありました。 JR東海は遺族に約720万円の損害賠償を求め、名古屋高裁は妻に対して約360万円の賠償を命じました。 地裁での判決が720万全額の賠償を命じたということなので、高裁判決によって遺族側の責任は軽くなったということですが、それでも認知症の家族を持つことのリスクが大きいということになってしまいます。
 老人介護の施設によっては、認知症気味の老人が外出するときには、数人で尾行して、事故などに巻き込まれないように交代交代で見張るところもあります。
 認知症の老人だからといって、決してヨボヨボなわけでもなく、半日近く遠くまで歩くこともありますから、大変な仕事です。 そうした複数人での見張りは、仕事であるから可能ですが、それを家族に対して無償の介護として要求するのは、決して現実的な要求ではありません。 自宅に座敷牢を作り、そこに閉じ込めておくことでしか、家族の安寧は得られないのが実態です。

 認知症の老人が被害者になるのですが、高速道路などに立ち入り、老人を轢いてしまう事故があります。 人身事故を起こしてしまった運転側のショックも大きく、責任割合は0というわけにも行かず、賠償金を支払う必要が出てきます。
 

 

支援の限界(実際例)

 A子さん(84歳)は20年前に夫を亡くし、子どもがいなかったため新宿区のアパートで1人で暮らしていました。 アルツハイマー型の認知症だったA子さんは、介護サービスを利用しながら独り暮らしを続けていて、高齢者支援の地域の拠点、「地域包括支援センター」が支えていました。 地域包括支援センターではA子さんの認知症が進行していると感じ、可能なかぎり見守りの機会を多くしようと考えていました。 訪問介護は介護保険で使える上限の、毎日、朝と夜の2回。それだけでは足りないとして、昼には、区独自の「配食サービス」を加え、1日3回、見守りができるようにしていました。 ところがA子さんは去年4月、ヘルパーが来る前の早朝に自宅を出たまま行方が分からなくなり、5キロほど離れた川で遺体となって見つかりました。 徘徊の末、誤って川に転落したとみられています。 地域包括支援センターは、今あるサービスだけでは1人で暮らす認知症高齢者の行方不明を防ぐのは難しい、24時間見守り続けるのはほぼ不可能です。