特別養子縁組

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 平成26年4月2日に宇都宮家庭裁判所にて確定した、特別養子縁組の内容は、実親の

不同意でも特別養子縁組を認定した画期的な判断が示されました。

 他人が産んだ女児を出生直後から7年間育ててきた栃木県内の50代の夫婦が、特別養子縁組を求めた家事審判で、宇都宮家裁が実の親の同意が無くていも「子供の福祉のため」と縁組を決定しました。  審判で実親は「親子の縁は切りたくない」と主張していましたが、間部裁判官は「実親は女児との交流や経済的支援はなく、夫婦に任せきりだった。 子供の利益を著しく害する状況で、新たな親子関係を築くことが子どもの福祉のためだ」と指摘しました。 実親の虐待が無い場合でも、子供の利益を最優先にする判断は珍しいですが、今後は子の利益を重視する考えかたが一般的になっていくのは間違いないでしょう。

  

 特別養子縁組とは児童福祉のための養子縁組の制度です。 昭和63年(1988年)1月1日に特別養子縁組制度が施行され、26年経過しました。
 様々な事情により実の親の下での生活が困難で適切な環境に置かれない乳幼児が、別の家庭で養育を受けることを目的に設けられました。 準拠法は民法第817条、児童福祉法第28条です。 

   普通養子縁組の場合、戸籍上、養子は実親と養親の2組の親を持つことになりますが特別養子縁組は養親と養子の親子関係を重視するため、養子は戸籍上養親の子となり、実親との親子関係がなくなる点で普通養子縁組と異なります。 ただし、民法第734条により近親結婚禁止規定は特別養子縁組によっても実親と実子の親子関係に適応されます。 特別養子縁組の条件として、養子の年齢は6歳未満と制限されています(6才未満から事実上養育していたと認められた場合は8才未満まで可能)。

 尚、里親と養子縁組が混合されがちですが、里親委託は育ての親が一時的に子どもを預かる制度であり、里親と子どもの戸籍上の繋がりは発生しない点が養子縁組とは異なっています。 

 また非嫡出子が特別養子縁組となった場合、実親は縁組後と離縁前に認知することはできません(最高裁平成5年7月14日判決)。

 

 民法817条2①には「家庭裁判所は民法817条3から817条7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組をさせることが出来る」とされています。 このように特別養子は、縁組成立の時から実父母との間の親子関係及びそれから生じる権利義務関係が消滅することになりますので実父母の相続人とはなりません。

 

  • 特別養子縁組の要件

1)民法第817条の3 (養親の夫婦共同縁組養親が結婚していて、夫婦2人とも養

      親になること
2)民法第817条の4
養親
となる者の年齢)養親の2人とも成人していて、少なく

  とも一方が25歳以上であること

3)民法第817条の5養子となる者の年齢)養子になる子供が6歳未満であること

      (事実上、6歳未満から養育していたことが認められた場合は、8歳未満)
4)民法第817条
の6
父母の同)養子の実の両親が同意していること 

5)民法第817条の7(子の利益のための特別の必要性)実の両親の経済状態、家庭

  環境などが、著しく子供の養育に悪影響を与える場合

特別養子縁組沿革

菊田医師事件(赤ちゃん斡旋事件)

 菊田医師事件とは、1973年に産婦人科医菊田医師が乳児の出生書の偽装によって罪に問われた事件で、特別養子縁組成立の発端になったとされています。

 宮城県石巻市の産婦人科医であった菊田医師は、人工中絶によって乳児の生命を絶つことに疑問を抱いていたことから、中絶を希望する妊婦に対し、出産して乳児を養子に出すように説得していました。 同時に、子宝に恵まれないために養子の引き取りを希望する夫婦を地元紙で募集し、乳児を無報酬で引き渡していました。 その数は100人以上に及ぶと言われています。 実母が出産した経歴が戸籍に残らないように、また養親が実子のように養子を養育できるようにとの配慮から、乳児の出生証明書を偽造していたことが発覚しました。 医師法違反、公正証書原本不実記載、同行使の罪に問われ、罰金20万円、6ヶ月の医療行為停止が科されました。

 しかし、この事件を契機に、法律に違反しながらも乳児の命を守ったことへの賛否両論が巻き起こり、実子として養子を育てたいと考える養親や、社会的養護の下に置かれる子どもが社会的に認知され、要望に応える制度が必要だという機運が高まりました。 

愛知方式 

 愛知方式とは、1982年に愛知県の児童相談所で始まった特別養子縁組の斡旋をさします。 乳幼児は家庭で愛情を持って育てられるべきという考えを基に、児童福祉司の矢満田さんが取り組み始めました。 出産前に実母の相談に乗り、養親を選定、赤ちゃんを退院後に引き渡す方式をとっていますが、児童相談所は通常ならば乳児を乳児院に、措置をとることが一般的ですので、愛知方式は画期的と言われるようになりました。 特別養子縁組の斡旋方法の基礎となり、現在も国内の複数のあっせん団体に活用されています。

 

特別養子縁組制度の運用

担い手

 特別養子縁組の成立には、養子と養親の斡旋が不可欠であり、その仲介は児童相談所と民間斡旋事業者、医療機関が担っています。

児童相談所

 児童相談所は児童福祉を担う公の機関であり、特別養子縁組の斡旋も業務の一部として行っています。 しかし愛知方式のように産まれた赤ちゃんをすぐに養親に引き渡すケースは稀で、まずは乳児院へ措置し、退所後に児童相談所が養親に引き渡すケースが一般的とされています。  

民間あっせん事業者

 全国に15団体あります。 種類の内訳は、任意団体、社団法人、宗教団体、非営利団体となっており、また個人活動で斡旋を行っている事業者も2名います。  事業者の活動経費は、斡旋にかかる費用を実費あるいは寄付金として養親に負担してもらうことで活動を維持しています。 事業者によって養親の負担額は大きく異なり、その範囲は0円から200万円までに及びます。 また寄付金や会費の有無も団体に依拠しています。 費用の主な内訳は、弁護士・カウンセラー・養子引き渡しの際に必要なベビーシッター等の人件費、裁判費用、交通費、オフィスおよび業務運営諸経費となっています。

医療機関

 従来、一部の医師会や産婦人科医が斡旋を行っているのみでしたが、2013年9月にあんしん母と子の産婦人科連絡協議会が設置されたことを受け、担い手としての医療機関の存在感は増してきています。 同協議会には、14道府県の計20の産婦人科が参加し、連携して特別養子縁組に取り組むネットワークが形成されました。

 

特別養子縁組成立までの流れ

 特別養子縁組成立までの流れは、児童相談所での登録を経て縁組するか、民間斡旋事業者での登録を経て縁組するかによって異なっています。 登録後、実際に養子を受け入れるまでの待機期間についても、数週間から数年間までケースにより大きく異なります。

児童相談所の場合(一般的)

 児童相談所を通して特別養子縁組をする場合、まず、養子縁組を目的としてそれまでの間里親として子どもを養育する、養子縁組里親への登録が必要です。 自治体により多少の差異はあるが、一般的に養子縁組里親登録までの流れは以下のようになっています。

・児童相談所へ問い合わせ

・申請要件の確認

・認定前研修申込・受講

・登録申請

・児童相談所職員による家庭調査

・児童福祉審議会里親認定部会(2ヶ月に一回)で審議

・都道府県知事が認定登録

養子縁組里親としての登録をした後は、児童相談所からの子どもの紹介を待つことになります。 紹介を受けてから、特別養子縁組の成立に至るまでは以下の通りです。

・児童相談所からの子どもの紹介

・児童相談所立会いの下、子どもと里親の引き合わせ

・1~3ヶ月間の交流期間

・児童相談所による委託の決定

・委託から半年程度の試験養育期間を経て、家庭裁判所へ申立て

・家庭裁判所での調査を受け、特別養子縁組の審判確定

民間あっせん事業者の場合

 民間事業者でも、まず書類審査や面接を経て里親に登録することを求められる場合が多いです。 民間事業者における、養親になるまでの具体的な流れは以下のようになっています。

・民間のあっせん事業者へ問い合わせ

・面接/審判により、養親の条件を満たしているか、養子を受け入れる環境が整って

 いるか判断

・養親登録が完了

・斡旋事業者から養子を引き取ってほしいとの連絡を受ける

・乳児が養親の元に連れられ、乳児との生活開始

・家庭裁判所への申し立て

・6ヶ月間の試験養育期間を経て、特別養子縁組の審判確定

 

特別養子縁組成立要件

 特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに成立するものとされています。

 

特別養子縁組Q&A

Q1家庭裁判所の審判に不服がある場合、抗告出来るのですか?

A1家事審判規則では、養子をするについての許可の審判や特別養子縁組を成立させる 

 審判に対しては即時抗告ができますので、審判書には主文と理由の要旨が記載され 

 ます。 理由の「要旨」といっても、子が産まれるまでの状況や養子をするに至っ 

 た経緯等がかなり詳細に記載されますので、通常の訴訟における判決書とさほど変

 わりません。 理由を詳しく書いておかないと、即時抗告をするときに審判のどこ

 に問題があるかを指摘できませんし、抗告審の裁判所が審判を妥当かどうかを判断 

 するための材料がなくなってしまうからです。

Q2

A2

Q3

A3

 

特別養子縁組判例

1.海外養子の取戻し
大阪地決昭和55年6月16日 原文

最決昭和55年9月5日 原文
*妻子ある男性の子どもを妊娠し、医師や民間団体の斡旋によって、子どもをハワイの日系二世の養子に出したが、その後、男性が離婚し、子どもの実母と再婚したので、養子縁組の無効を主張して、人身保護請求を申し立てたところ、外国にいる子どもに対し人身保護法を発動することはできないとして棄却され上告も却下された事案です。

2.実親の同意
①福島家裁会津若松支審平成4年9月14日 原文

*実父とされる者(日本人)は、認知することなく死亡し、実母(在日韓国人)は、
行方不明となっている事案において、同意要件の例外を認めて、特別養子縁組の
申立てを認容しました。
②福岡高決平成3年12月27日  原文
③青森家五所川原支審平成21年5月21日  原文
*いずれも実母ないし実父が同意を拒否しているが、子どもの利益を害する
おそれがあるとして、同意要件の例外を認めた事案です。
④大阪高決昭和63年10月27日  原文
*実母が普通養子から特別養子の転換への同意を拒否している事案において、
子どもを悪意で遺棄しているわけではなく、不同意もやむを得ないとして、
特別養子縁組の申立てを却下しました。

⑤長野家松本支審平成14年9月27日  原文
⑥東京高決平成14年12月16日  原文
*里親会のあっせんにより、養親希望者に子どもを引き渡したが、特別養子縁組の申立後に実母が同意を撤回した、という事案です。家裁では、子どもを実母に戻すことは、子どもの利益を害するとして、例外的に同意が不要である場合に該当すると判断しましたが、高裁は、例外に該当するか否かに疑問が残るとして、原審に差し戻す決定をしました。

⑦東京高決平成元年3月27日  原文
⑧東京高決平成2年1月30日  原文
*いずれも、家裁で養子縁組の審判が下された後、確定前に実母が同意を撤回したので、高裁が原審を取り消し、差し戻した事案です。

3.里親委託の子どもの連れ戻し
山形家審平成12年3月10日 原文
仙台高決平成12年6月22日 原文
*3年7か月にわたって里親委託されていた子どもについて、実母が引渡しを求めたのに対し、里親の側が自らを監護者として指定するよう申し立てた事案です。家裁は、民法766条を類推適用して、里親側の申立てを認容しましたが、高裁は、このような申立てを認める規定が存在しないとして、これを棄却しました 。高裁は、児相の保護措置を理由として、実母の申立ても却下しましたが、後に措置が解除され、子どもが実母に引き渡されました。しかし、虐待が明るみに出たので、再び児相の措置により、元の里親に戻され、子どもは、精神的に大きなダメージを受けたそうです。



     

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