危ない遺産④「空家」

 「横浜のアオヤギ行政書士事務所」が親の危ない遺産「空き家」につき、解説いたします。 ご質問やご意見は下記のフォームに記載のうえ、メールにて送信下さい。 なお、返信希望のご質問には、貴メールアドレスの記載をお忘れなく。

 

 先日、公表された、総務省「住宅・土地統計調査速報」によれば、2013年度の空き家数は、全国で820万戸、空き家率は13.5%と2012年度より増加しています。 その主な原因は、相続によるものです。 地方に住む両親が亡くなったり、施設に入所したりして、、相続人がすでに都会に住んでいて、住む人がなくなったケースです。

 特に問題になるのは、空き家になったにも拘わらず、買い手や借り手を募集しないで、放置している空き家です。 また、その殆どが、接道条件が悪く、単体での処分が困難です。

 

放置期間が長いほどリスクが高くなる空家になった田舎の実き家

  空き家になった田舎の家を放置する気はなくても、都会に基盤のある人はすぐに帰るわけにはいきません。 また、売却しようにも土地の相続手続きがきちんとされていなかったり、隣家との境界線が曖昧だったりで、売るに売れないことも多々あります。 相続以外にも、地方に住んでいる親を都会に呼寄せたり、施設に入所させたりするケースが増えているため、多くの人が実家の処分を検討する必要に迫られています。 これまでの日本にはなかった現象が増えてきています。 総務省の調査では、全国の空家総数は2013年現在で、約800万戸以上で、30年前の3倍の数字です、空家が総住宅数に占める割合が15%にも上ります。 空家となった理由の過半をしめるのが、居住者の死亡や相続人不存在による管理不全、所有者が遠方にいるため、定期的管理が不能です。 今年、臨時国会に提出される予定の「空家対策法案」が可決されると、田舎に放置された家はされに厄介な存在になってしまいます。 空家が倒壊の危険性があったり、火災や犯罪を誘発する「老朽危険家屋」と認定されると、固定資産税の優遇がうけられなくなり、自治体の判断で建物を解体し、数百万円の解体費用を所有者に請求できるようになります。 本来は、空家が発生した時点で売るなり貸すなり決めて、できるだけ流動化すべきです。 本来はプラスの遺産であるはずの不動産がマイナスの遺産になる可能性があります。

 

空き家が管理不全となる理由

①所有者が遠方にいて定期的な管理が不能   :約53%

②居住者の死亡、相続人不存在による管理不全 :約50%

③所有者が補修や解体の費用が負担出来ない  :約35%

④住替え、子供宅、高齢者施設への転居    :約33%

⑤所有者に適正な管理をする意思がない    :約17%

⑥相続人間のトラブルで管理活用の意思統一不能:約数%

⑦その他、活用が困難なため管理不全     :約13%

 

空き家が起こす問題

①空家の実家に空き巣が入ること。

 金品の被害はたいしたことがなくとも、空き巣にはいられたという防犯面での不安

 を近所に与える影響は大きいです。「親戚や近所の親しい人に、定期的な見回りを

 頼むなどの対策を講じる必要があります」
②浮浪者や子供らのたまり場になることが多いです。
 荒れ放題になると、浮浪者が入り込んで生活したり、子供たちが溜場にすることも

 あります。 煙草やシンナー遊びなどの非行や犯罪の温床になり易いだけでなく、

 煙草や焚火から火事になり、近隣に火が回る危険もあります。

③廃屋の家の破片が台風で飛んだといった自然災害による被害もおこります。
 修理の行き届いた家なら問題ありませんが、明らかに放置して危険な状態だった家

 が崩れたり、破片が飛んで他人に被害を与えた場合は、責任を問われる可能性が大

 きいので注意が必要です。 しっかり管理していないと裁判沙汰になる可能も否定

 できません。

記の名義変更のトラブル
 登記の名義は祖父のままで、その子である父が亡くなればその配偶者や子供たちに

 相続の権利が移る。 気づいたときには相続人が膨れあがっていて、売却の際には

 相続人全員の承諾が必要になり、相続人が全国にいれば、了承を得るために、尋ね

 歩くしかありません。 しかも、誰か1人が売却に反対すれば、話は進みません。

⑤登記名義人に固定資産税の負担がかかる。

 田舎の不動産の固定資産税は高くはありませんが、まれに非常に広い不動産物件を

 所有していると、思いもかけない金額に驚くことになります。

 

空き家が増加する原因と対策

 全国で、184の自治体が行政代執行条例を制定していますが、まだ一部です。

東京都足立区ではここ数年、空き家の苦情が目立つようになりました。 ある老朽家屋で壁面がはがれ、歩道に落ちたことをきっかけに解体を勧告できる条例を制定しました。 解体する人には木造で50万円、非木造で100万円の補助金を出す制度なども設けて効果が出始めていますが、持ち主が分からないと対応が難しいといいます。また、条例はあくまで家主に対して勧告をするもので、行政代執行は難しいのが現状です。 行政代執行は、豪雪による倒壊の危険に直面している自治体で活用している例がありますが、これも費用の回収が難しいのが現状です。

 千葉県松戸市の場合でも「東日本大震災以降、空き家についての通報が増えた」といいます。 同市でも2014年4月、住民に空き家の解体を促す対策条例を施行しました。 埼玉県所沢市など全国で50を超える自治体が空き家対策条例を設けています。 国土交通省住宅政策課の企画専門官によると、「空き家は急増しています、原因は少子高齢化、核家族化、格差社会などが影響しています」とのことですが、そんなことは前々から解っていることです。 従って、行政の不作為に原因があると思います。 なぜ放置されるのか? それは、相続人が複数いて話が纏まらなかったり、手続きが面倒で処分を先送りしたりで、処分が遅れるケースが多いようです。

  また、固定資産税の仕組みが一因と考えられています。 200平米以下の土地に建物を建てると、軽減税率六分の一になる適用があります。 古い家屋が建つ土地を売却するには、更地にする必要がありますが、解体費用がかかる上、建物がなくなると固定資産税が6倍に跳ね上がります。 すぐに売る必要がない所有者側にとっては「高く売れなければコストをかけにくい」のも原因の一つです。 新規需要を掘り起こすには、住宅地でも介護施設などの事業所を建て易いように規制緩和をしないと、根本的な解決には、なりません。 空き家の放置を防ぐには、周囲への迷惑に応じた税金を課すなどの新しい対策が必要も必要です。

 

空き家バンク

 空き家バンクとは、自治体がインターネット上で、物件情報を公開し、仲介するものです。 全国で374の市町村が利用しておりますが、開店休業のものも多いです。 成功している空き家バンクは、地域の協力員などと連携して物件の情報を収集し、入居希望者に対してもきめ細かい対応をしています。

 

神奈川県南足柄市空き家バンクの事業実施要綱(参考資料)

(趣旨)

 第1条 この要綱は、市内に所在する空き家を有効活用し、定住の促進及び地域の活性化を図るため、空き家バンク事業を実施することについて必要な事項を定めるものとする。

(定義)

 第2条 この要綱において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

    空き家 市内に所在する個人の居住を目的として建築された建物(一戸建てのものに限る。)及びそ

     れに係る土地で、常時無人の状態にあるものをいう。

     2. 所有者等 空き家に係る所有権その他の権利により当該空き家の売却、賃貸等を行うことができる者を

              いう

         3. 空き家バンク事業 空き家の売却、賃貸等を希望する所有者等から登録の申込みを受けた当該空き家に 

          係る情報を、空き家の利用を希望する者(以下「利用希望者」という。) に対し、市ホームページ及び窓

          口で提供し、並びに利用希望者を所有者等に紹介する制度をいう。

 (適用上の注意)

 第3条 この要綱は、空き家バンク事業以外による空き家の売買、賃貸等の取引を妨げるものではない。

 (空き家の登録の申込み等)

 第4条 空き家バンク登録台帳に登録をしようとする所有者等(以下「登録申込者」という。)は、空き家バンク登録台帳登録申込書(第1号様式)に空き家バンク登録カード(第2号様式。以下「登録カード」という。)を添えて市長に提出しなければならない。

 2 市長は、前項の規定による申込みがあったときは、その内容を審査し、及び当該空き家の実地調査等を行い、当該空き家が次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、空き家バンク登録台帳に登録するものとする。 

 (1).当該空き家の全ての所有者等が空き家バンク事業の趣旨を理解し、登録することについて承諾をしているこ 

      と。

 (2).南足柄市暴力団排除条例(平成23年南足柄市条例第21号)第2条第2号に規定する暴力団、同条第4号に規 

  定する暴力団員等、同条第5号に規定する暴力団経営支配法人等又は同条例第7条に規定する暴力団員等と密

  接な関係を有すると認められる者が所有する空き家でないこと。

 (3).不動産競売にかけられた状態にないこと。

 3 市長は、前項の規定による登録をしたときは、空き家バンク登録台帳登録完了通知書(第3号様式)を当該

     登録申込者に通知するものとする.

 4   市長は、第2項の規定により登録された情報について、毎年1回次条に規定する登録者の意向確認を行うもの

     とする。

(登録事項の変更又は取消しの届出)

 第5条 前条第3項の規定による登録の通知を受けた者(以下「登録者」という。)は、当該登録事項に変更が

   あったとき又は当該空き家の空き家バンク登録台帳への登録を取り消そうとするときは、速やかに空き家バンク

   登録台帳登録変更(取消し)届書(第4号様式)を市長に提出しなければならない。

 (登録の抹消)

 第6条 市長は、次の各号のいずれかに該当するときは、当該空き家バンク登録台帳への登録を抹消するととも

   に、空き家バンク登録台帳登録抹消通知書(第5号様式)により当該登録者に通知するものとする。

  1.前条の規定による登録の取消しの届出があったとき。

    2.申込みの内容に虚偽があったとき。

      3.前2号に掲げるもののほか、市長が適当でないと認めたとき。

 (空き家情報の提供)

 第7条 市長は、必要に応じて、空き家バンク登録台帳に登録された情報を市ホームページ及び窓口で提供する

    ものとする。

 (登録者への紹介の申込み等)

 第8条 空き家バンク登録台帳に登録された空き家に係る登録者への紹介を希望する利用希望者は、空き家バン

    ク登録者紹介希望申込書(第6号様式)に誓約書(第7号様式)を添えて市長に提出しなければならない。

 2 前項の規定により紹介を希望する利用希望者は、利用希望者本人であることを証する次の各号に掲げる書類

    のいずれかを提示し、又はその写しを提出しなければならない。 

  1.運転免許証。

  2.住民基本台帳カード

  3.旅券

  4.前3号に掲げるものの墓、これらに類するものとして市町が認める書類

3 市長は、前項の規定により申込みのあった場合には、当該空き家に係る登録者に対しその旨を通知するものと

  する。

4 前項の規定にかかわらず、利用登録者が次の各号のいずれかに該当するときは、登録者への紹介は行わないも

  のとする。

      1.南足柄市暴力団排除条例第2条第4号に規定する暴力団員等又は同条例第7条に規定する暴力団員等と密接

        な関係を有すると認められる者であるとき。

      2.前号に掲げるもののほか、市長が紹介することを適当でないと認めた者であるとき。

 (登録者と利用希望者の交渉等)

 第9条 前条第3項の規定により通知を受けた登録者は、利用希望者と空き家に関する売買、賃貸借等に関する

    交渉等を行うものとする。

 2 市長は、登録者と利用希望者との空き家に関する売買、賃貸借等の交渉等については、直接これに関与しな

   いものとする。

 (実施細目)

 10条 この要綱に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定める。

 附 則  この要綱は、平成26年3月1日から施行する。

 

  

今後の空き家率の予測

  2033年には、全国の空き家率は、13.3%と予測されています。 2008年度の空き家率の実績値が13.1%であることから、今後は緩やかには増加するものの、13%台で収束すると考えれています。

 主要な都市圏での空き家率は、東京、神奈川は11.2%、大阪は14.2%、名古屋は12.0%と予測されています。 今後、地方は、世帯数の減少に住宅の滅失が追いつかず、既存住宅が余ることで空き家率が増加するのに対して、都市部では、世帯数が減少しなく、需給バランスが保たれると予測されています。