危ない遺産③「愛人・隠し子」

 「横浜のアオヤギ行政書士事務所」が相続の危ない遺産「愛人・内縁・隠し子」につき解説いたします。 ご質問やご意見は下記のフォームに記載の上、メールにて送信下さい。 なお、返信希望のご質問には、貴メールアドレスの記載をお忘れなく。

 

愛人の相続権

 愛人であっても、有効な遺言書があリ、愛人に相続させる旨の記載がある場合には、相続権があります。 しかし、配偶者や子供がいる場合、仮に「愛人に全財産を譲る」という遺言を残したとしても、法定相続人の権利である遺留分を侵害することはできません。 また、愛人の全てが遺言さえあれば相続できるというわけでもなく、公序良俗に反する関係にあった場合には相続することができません。 具体的に言えば、夫が職場で不倫関係に陥り、一緒に財産を築いてきた妻子に財産を譲りたいといっても、ほとんどの場合無理という事になります。  愛人という言葉の定義には様々な認識が存在することになるかもしれませんが、内縁関係とは異なり、生計を共にはしていない場合を指すことがほとんどです。 むしろ、愛人は配偶者の権利を侵しているものとして、法的には配偶者よりも弱い立場にあります。 配偶者に訴えられて、慰謝料を請求されることも少なくはありません。 不倫が公序良俗に反する行為である以上、法的に愛人を保護するわけがないのです。 とはいえ、愛人ではなく、愛人の子供であれば話は別です。 愛人当人には遺贈であってもその相続が認められないことも多いのですが、愛人の子供も配偶者の子供と同様、第一順位の相続権があります。 きちんと認知していれば、その子供は非嫡出子として、嫡出子と同じ遺産を相続することが出来ます。 まれに、愛人に遺産を相続させる目的で、愛人を養子縁組するような場合もありますが、もちろん配偶者がその事実を知ってから半年以内に養子縁組の取り消しを請求することが出来ます。 被相続人が亡くなってからの戸籍確認で、が養子になっていると知ってからでも十分取り消し請求は間に合いますので、配偶者が愛人に相続を認めなければこの方法はまず無理だと考えましょう。 被相続人に配偶者がいない場合は、内縁関係として扱われ、特別縁故者になれる可能性もあります。 ですが愛人となると、確実に自分の死後、遺産を渡す事は難しいと考えましょう。 ですから、愛人に対しては、若干の贈与税を支払う必要がある程度の贈与を、生前贈与の形で数年に渡って、譲っていくのが最も確実です。 あえて贈与税を支払う形にするのは、愛人が勝手に財産を使いこんだり、勝手に預貯金などの名義変更を行ったりしたのでは、と訴えられないようにする対策です。 ただし、もちろんこの場合も配偶者などの遺留分を侵しての贈与は、配偶者が愛人に自分の相続分を請求出来ますから、遺留分を侵さないことも、なるべく安全に愛人に遺産を渡すためのコツになります。

 

内縁・特別縁故者の相続権

 近年、法的な婚姻関係に依らずにパートナーと生活を共にする内縁関係や、生前に親族以外の他人に身の回りの世話などを頼ったり、他人と生計を同じくしたりという特別縁故者など、被相続人を取り巻く人間関係は多様化しています。

 まずは、被相続人に内縁関係のパートナーがいた場合についてですが、結論から申しますと内縁関係では基本的に相続権はありません。 民法の規定によりますと、法定相続人になれるのは配偶者、子、父母、兄弟姉妹(祖父母や孫、甥・姪に相続権が生じる場合もあり)とされています。 ここで言う「配偶者」とは「法律上の夫または妻」のことを指します。 つまり、被相続人の生前、内縁関係のパートナーがどんなに被相続人に尽くしてきたとしても、戸籍上婚姻がなければ、基本的に相続権はないということになります。 また、特別縁故者内縁関係同様、基本的には相続権がありません。 しかしながら、被相続人に身寄りがなく他に相続人がいない場合に限り、家庭裁判所に申立てを行うことによって相続権を得ることが出来ます。 生前、被相続人の介護や身の回りの世話など被相続人への貢献の事実が客観的に認められることによって相続人となることが出来るのです。 このケースに倣い、先に挙げた内縁関係のパートナーが特別縁故者として相続の申立てをすることも可能です。 内縁関係の取扱いの説明の際「基本的に相続権はない」と申しましたが、たとえ内縁であっても立場を変えて特別縁故者とすることにより、相続権を得られる場合があります。

 

隠し子の相続権

 隠し子と相続非嫡出子(婚外子)の法定相続分規定の違憲判決が出て以来、「父の死後、突然見たことも聞いたこともない隠し子が出てきて相続を要求されたら困る」という意見をよく聞くようになりました。 また、相続人は、被相続人の隠し子である非嫡出子の存在を確かめようがないのではないか、という主張も聞かれます。

 まず、今回の最高裁判決以前であっても、非嫡出子は、少なくとも嫡出子の半分の相続分がありましたので、隠し子が相続を要求できること自体には以前から変わりありません。 ただ、要求できる額が増えたというだけです。 つぎに、隠し子の存在を確かめることは可能です。戸籍を見ることで確認できます。

 父の隠し子の場合、認知していなければ、戸籍に何ら記載はありませんが、この場合そもそも相続権がありません。 認知していれば、いわゆる非嫡出子として相続権があります。 そして、非嫡出子は、父の戸籍の身分事項欄に、認知した旨が記載されていますので、ここを見れば父の隠し子たる非嫡出子の存在を確かめることができるのです。 ただし気をつける必要があるのは、父が認知した後、自分の戸籍を移動していた場合(婚姻、本籍の移動など)、認知したことがある事項は、新しい戸籍に移記されません。 したがって、この場合には、遡ってすべての戸籍を確かめる必要があるのです。 母の隠し子の場合は、通常、非嫡出子は出生時の母の戸籍に入りますので、戸籍を見ればわかるはずです。 戸籍の取り寄せ、調べ方などよくわからなければ、行政書士に頼むとよいでしょう。

 

 

内縁関係の相続権 Q&A

Q1:私の母には15年連れ添った内縁関係にある男性がいて、この男性の持ち家で同

   棲しています。 この男性には娘さんが1人、兄弟2人おります。
   この男性が死亡した場合、母には相続権がないので、この娘さんに「すぐに家

   から出て行ってください」と言われればすぐに明け渡さなければならないので

   しょうか?

A1:最高裁判例平成12年03月10日は、
     『内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、法律上の夫婦の

         離婚に伴う財産分与に関する民法768条の規定を類推適用することはできない

         と解するのが相当である。   民法は、法律上の夫婦の婚姻解消時における財産

   関係の清算及び婚姻解消後の扶養については、離婚による解消と当事者の一方

   の死亡による解消とを区別し、前者の場合には財産分与の方法を用意し、後者

   の場合には相続により財産を承継させることでこれを処理するものとしてい

   る。 このことにかんがみると、内縁の夫婦について、離別による内縁解消の

   場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に

   適するものとしてその合理性を承認し得るとしても、死亡による内縁解消のと

   きに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くこ

   とは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予

   定しないところである。 また、死亡した内縁配偶者の扶養義務が遺産の負担

   となってその相続人に承継されると解する余地もない。 したがって、生存内

   縁配偶者が死亡内縁配偶者の相続人に対して清算的要素及び扶養的要素を含む

   財産分与請求権を有するものと解することはできないといわざるを得ない。』

   とします。

    つまり「内縁の妻」には、「内縁の夫」の遺産を相続する余地は全く無いの

   です。(「相続」したいなら、内縁の夫婦が共に生きている間に 役場に婚姻届

   を提出して「婚姻」する=法律上の夫婦になっておく事が必要です。)
   なお、母が契約上・法律上の受取人になっている死亡保険金や死亡退職金等が

   あれば、それは「遺産ではない」=「受取人(母)の固有の財産だ」とされて

   いますから、これは受け取れます。 尤も、生前贈与を受けたり、「内縁の

   夫」の残した有効な遺言書により遺贈を受ける事は出来ます。 但し、生前贈

   与の場合 贈与税が掛かるし、総財産の1/2を超える生前贈与・遺贈を受けると

   1/2を超える部分は娘さんから「遺留分減殺請求権」を行使されれば取り返さ

   れてしまいます。
   (内縁の夫婦間では、婚姻期間20年以上の夫婦の間で居住用の不動産を贈与し

   たときの「贈与税の配偶者控除」は、使えません。 遺贈を受けた場合は、母

   は相続税を支払えば良い事になりますが、「配偶者の税額の軽減」は使えず、

   「相続人以外が遺贈を受けた場合」として2割増の相続税が掛かります。
     男性が亡くなった時点で 娘さんが生きていて 家庭裁判所において相続放棄を 

   しない以上、娘さんが「相続欠格者」にも 「廃除者」にも当たらなければ)、

   兄弟にも男性の遺産相続権は全くありません。
愛人の相続Q&A

Q1:愛人に財産を相続させたいが、その方法は?
A1:愛人の財産を全て譲るといった遺言をしたような場合、遺留分を有する相続人

   は遺留分を請求する権利がありますが、遺言内容そのものが無効となることは

   原則としてありません。 但し、これがいわゆる不倫関係にある愛人に財産を

   遺贈ということになると、法的に難しくなります。

   不倫関係というのはそもそも不法行為であり、そうした関係を維持継続するた

   めに行われる贈与や遺贈は、公序良俗に反するものとして、遺言内容そのもの  

   が無効となる可能性が高いのです。 まして、愛人に全財産を遺贈する、ある

   いは妻や子の相続分が愛人に比べて著しく少ない、といった内容であればなお

   さらです。 ただ、長期間に及ぶ別居で夫婦関係が実質的に破綻している上、

   不倫相手と夫婦同然の生活を長年送っており、生計のほとんどを遺言者に頼っ

   ていた等の特段の事情があったケースで、愛人への遺贈を有効と認めた裁判例

   もあります。 とは言え、こうした遺贈を法的に有効とするためには、かなり

   厳しい条件が必要となることから、認められるのはあくまでも例外、と考えて

   おいてください。

Q2:愛人の子には相続できますか?
A2:あなたとの間に法律上の親子関係がないので、相続権はありません。 しか

   し、あなたが愛人の子を認知すれば、あなたとの間に法律上の親子関係が
   認められますので、相続権が発生します。 認知も、父または子の本籍地もし

   くは父の所在地のいずれかの市区町村役場に認知届を提出しておこないます。