公共の老後の住まい⑥養護老人ホーム

 「横浜のアオヤギ行政書士事務所」養護老人ホームにつき解説いたします、ご質問やご意見は下記のフォームに記載のうえ、メールにて送信下さい。 なお、返信希望のご質問には、貴メールアドレスの記載をお忘れなく。

 養護老人ホームとは身体的、精神的な理由をはじめ、経済的な理由や家庭環境(身寄りがいない)などによって、自宅で生活が困難と判断される、自立した高齢者を受け入れる市町村による社会福祉施設です。 社会復帰の促進のため、また自立した生活を送れるようになるための、必要な訓練などが行われています。 生活保護法の元に定められた養老施設がオリジンであるため、主に経済面で生活に困っている方が入居の対象となっています。 申込窓口は、現在在住んでいる市町村の高齢・障害者福祉課などです、直接市町村窓口へ相談のうえ、申込みをしてください。 市町村の審査によって、より緊急な人や困窮度の高い人は優先的に入所できるようになっています。 介護保険を使う特別養護老人ホームなどと違い、月20万円前後の費用は市町村が負担します。 かって、国が半分、市町村が4分の1~半分を負担していましたが、地方への税源移譲にともなって2005年度から市町村の全額負担となりました。 これを機に、財政が厳しい市町村では、養護老人ホームには入れず、国が主に負担する生活保護などを受けさせられる「措置控え」が相次ぐようになっています。

 特別養護老人ホームよりも状態が軽いという方が対象となります。 要介護状態ですが、比較的症状が軽い65歳以上のご高齢者が入居されています。 介護状態にあるけれど、認知症、寝たきりといった重度の介護状態ではない、また、経済的事情や生活環境によって、ご家族と一緒に暮らすことが困難という方が対象となります。 日本では高齢化が進み、医療技術の向上によって、これからさらに高齢化が進む状況です。 

 入居にかかる費用は、養護老人ホーム被措置者費用徴収基準の規定に基づき、基準となるのは、入居者本人や扶養義務のある家族の世帯収入、課税状況です。

 入居条件としては、病気がなく介護を必要としない自立した65歳以上の高齢者の方で、生活保護を受けている、または低所得などの原因によって自宅で生活ができないといった、経済的な理由を持つ方が入所対象となります。

 養護老人ホームは介護施設ではないため、上記の条件を満たす場合でも要介護1以上の認定を受けている方は基本的に入所できません。 しかし、ホームによっては要介護状態であっても入居が可能であったり、介護保険の特定施設認定を受けているところも少なからずありますので、ホームに直接確認が必要です。 主治医による意見書、誓約書などの必要書類から、入所条件を満たす生活環境・経済状況にあるかどうか、地域包括センターなどによって構成される入所判定委員会の審査を受け、その結果によって入所の可否が決定される仕組みとなっています。

 

2月17日朝日新聞朝刊から引用

措置控え ホーム入所「自治体の胸三寸」
 千葉県内のある養護老人ホームでは定員割れが続く。 2005年度から市町村が費用を全額負担するようになり、措置で新しく入所する高齢者が急減した。 いまは定員約80人に対し、入所者は約70人。 このうち2割ほどは東京都内の自治体から入っているという。 県内の市町村に問い合わせても「対象者がいない」という返事が多い。 施設長は「措置は自治体の胸三寸で決まる。困った高齢者の親族から『入れたい』という問い合わせもあるが、自分たちで決められないのがつらい」と話す。

低額施設受け皿 
 養護に入れない高齢者らの受け皿の一つが「無料低額宿泊所」だ。 10年現在で全国に488カ所ある。 生計が立てられず住む場所がない人を無料や低料金で宿泊させる施設で、生活保護を受ける人が自治体の紹介などで入ることが多い。 運営するには都道府県などへ届け出なければならない。 茨城県にある「A施設」もその一つだ。
月の宿泊代は食事付きで1人だと8万1千円、夫婦など2人だと12万円。
 15部屋あり、自治体の紹介で最大20人を受け入れ、就職先探しなど自立の手助けをしている。

 いまは22~75歳の20人が入居し、生活保護を受けて宿泊費を払っている。 住む家がない若者、老人ホームに入れない高齢者、障害者など様々だ。 ここで農業の仕事などをしながら、自活できる仕事が見つかれば出て行く。

 施設長のB氏はA施設を10年につくった。 「社会保障制度で救われない人を受け入れてきた」と言う。「(貧しい人を利用してもうける)貧困ビジネスの温床と言われるが、うちは違う。 医療費削減の影響で病院から出されたり、派遣切りにあったり、行き場のない人が来る。国にはその実態をわかってもらいたい」

 

1月27日、朝日新聞の朝刊から引用

 QTE4月から消費税率が8%に上がり、「負担増の時代」が幕を開ける。だが、負担は超高齢化社会で報われるのだろうか。社会保障の現場から報告します。

 沖縄県北部にある老人ホームに、がらんとして薄暗い一角がある。鉄筋2階建てのうち2階の半分を占める養護老人ホームだ。「昔はね、満室だった。毎日カラオケをしてにぎやかだった。すっかり人も減って。寂しいね」。サノさん(89)がぽつりと言う。 定員は50人なのに入所者は28人しかいない。30室ある一人部屋はほとんど空室で、4畳半にベッドがぽつんと置かれているだけだ。 養護老人ホームは、貧しかったり身寄りがなかったりして自力で暮らせない高齢者(65歳以上)を受け入れる。老後の安心を守る最後のとりでだ。介護が必要な高齢者が介護保険を使って入る特別養護老人ホームと違い、自治体が「措置」という名で入所を決め、費用をすべて負担する。 サノさんが入る養護とは逆に、1階と2階の残り半分を占める特養は満室だ。「養護は市町村が措置しなくなって減るばかり。特養は100人以上が入所待ちなのに」と施設長は言う。 ここの養護では、名護市などから高齢者を受け入れてきた。かつては満床に近かったが、この数年は新たな入所がなくなった。自治体による「措置控え」だ。 入所者を追い出す「措置外し」さえある。

  2011年6月、沖縄県南部にある養護にいた女性(90代)の親族に、南城市から文書が送られてきた。「介護の認定をさせるように」という要請だった。

 親族は市に呼び出され、「特養がいいですよ」と勧められた。いきなり環境が変わるのを心配したが、女性は措置を解除され、住み慣れた養護を後にした。

 前年には、糸満市がこの養護にいた別の女性(80代)の措置を外した。息子から虐待を受け、保護されて入所したのに、再び一緒に暮らしているという。

 いま、沖縄県全体で養護の入所者は定員の7割しかいない。「養護1人で生活保護4人分の財源がなくなる。措置を求められても、国が主に負担する生活保護や介護保険を利用してもらう」。県北部の市の担当者はそう打ち明ける。

 措置控えは全国に広がっている。「21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会」(大阪市)が、全国の養護の施設長に昨年9月に聞いたアンケート(301施設が回答)では、60%が「定員割れ」と答えた。その原因として「行政による措置控え」という答えが29%と最も多かった。 「市の担当者から今後は措置しないと明言された」(岡山)、「予算が計上されていないと断られた」(神奈川)、「介護保険を使って在宅を続けるよう勧めている」(福岡)、「まさに責任放棄だ」(群馬)。施設長からは、生活に困る高齢者を放り出す自治体に疑問の声があがる。UNQTE