民法900条4号但書「被嫡出子法定相続分」は最高裁違憲決定

「横浜のアオヤギ行政書士事務所」が遺産相続に大きく関係する婚外子(非嫡出子)の法定相続分が嫡出子と同じでなければならないとして、民法900条4号但書の規定が憲法違反とする最高裁大法廷決定につき解説します、なおご意見やご質問は下記のフォームにて送付下さい。

 

 法定相続分について、民法900条は、「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする」と定めると同時に、その但書前段で「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一」と規定しています。 そして、法定相続分の規定は、遺留分について準用することとされています。

 この民法900条4号但書が法の下の平等を定める憲法14条1項に違反しないかについて1995年7月5日は、本規定は「法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったもの」で、民法が法律婚主義を採用していることから、立法理由には合理的根拠があり、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の二分の一としたことが立法理由との関連で著しく不合理なものとは言えないとして、合憲の判断を下しました。

 規定の合憲性が争われたのは、2001年7月に死亡した東京都の男性と、同年11月に死亡した和歌山の男性らの遺産分割をめぐる審判です。 いずれも家裁、高裁は規定を合憲と判断し、婚外子側が特別抗告していたものです。

 

平成25年9月4日民法900条4号但書の最高裁大法廷違憲決定要旨

 法廷意見

  相続制度は、それぞれの国の伝統や社会事情、国民感情の他婚姻や親子関係への 

 意識や規律を総合的に考慮したうえで、どうのように定めるかは立法府の合理的な  

 裁量権に委ねられている。 

  婚外子の相続分が嫡出子の半分とする本件規定で生じる区別に、立法府の裁量権 

 を考慮しても合理的な根拠が認められない場合は、憲法違反と理解するのが相当 

 だ。 1995年の最高裁大法廷判決は合憲と判断したが、国民の意識などは時代とと 

 もに変遷する。 不断に検討、吟味されなければならない。

  本件規定が設けられた1947年の民法改正以降、日本では婚姻や家族の実態が変化 

 した。 高齢化の進展に伴い、生存配偶者の生活の保障の必要性が高まって1980年   

 には配偶者の相続分が引き上げれるなどした。 その後も婚姻や家族の形態が著し

 く多様化し、国民意識の多様化が大きく進んでいる。

  一方、諸外国では1960年代後半以降、婚外子と嫡出子の差別が撤廃された。 現

 在、日本以外で差別を設けている国は欧米諸国にはなく、世界でも限られた状況

 だ。国連も本件規定を問題にして、懸念の表明と法改正の勧告を繰り返してきた。

  日本でも1994~2006年に、住民票や戸籍での続柄の記載を婚外子と嫡出子で同

 様に取り扱うようになったほか、2008年には婚外子の日本国籍取得を認めない国籍

 法の規定を違憲とする最高裁大法廷判決もでた。

  相続分の平等化の問題は、かなり早くから意識されて準備が進めらたが、法案の 

 国会提出には至らず、現在も法改正は実現していない。

  国民の意識の多様化が言われつつも、増加している婚外子の出生数が欧米に比べ

 ると少ないこと等、法律婚を尊重する意識が幅広く浸透しているためと思われる。

 しかし、本規定の合理性は憲法に照らして婚外子の権利が不当に侵害されているか

 否かの観点から判断されるべきだ。

  最高裁は、1995年の大法廷決定以来、本件規定を合憲とする判断を示してきた 

 が、1995年の決定でも反対意見や、1947年の民法改正当時の合理性が失われつつ 

 あるとの補足意見が述べられていた。

  2003年3月31日の同種訴訟の判決以降の判例は、その補足意見の内容を考慮すれ 

 ば、合憲の判断を辛うじて維持してきたものとみることが出来る。

  本件想定の合理性に関する種々の事柄の変遷は、その一つだけでは相続分の区別

 を不合理とするべき理由にはならない。 しかし、1947年から現在に至るまで、家

 族という共同体の中における個人の尊重がより明確に意識されてきたことは明らか 

 だ。

  そして、認識の変化に伴い、父母が婚姻関係になったという、子自らが選択や修

 正する余地のない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として、 

 尊重し、その権利を保障すべきである、という考えが確立されている。

  以上を総合すれば、遅くとも今回の相続が始まった2001年当時は、相続分を区別

 する合理的根拠は失われており、本件規定は憲法に違反する。

  ただ、今回の決定の違憲判決が既に行われた遺産分割に影響し、解決済みの事案 

 にも効果が及べは、著しく法的安定性を害することになる。

  従って今回の決定は2001年7月からこの日の決定までに、開始されたほかの相続

 について、本件規定を前提に行われた遺産分割の審判や裁判、分割協議、合意など

 で確定的となった法律関係に影響を及ぼすものではない。

補足意見

  金築誠志裁判官: 

    最高裁決定の効果は遡及するのが原則だが、法的安定性を害するときは後退

   させるべきだ。 予測される混乱を回避するためになされたもので、違憲判断

   と密接に関連しており、単なる傍論ではない。

  千葉勝美裁判官: 

    法定が、違憲判断の拘束が及ぶ範囲を示したのは異例だ。現行の規定を前提

   に築き上げられた法的安定性を損なう事態が生じるのを避ける為の措置で、法

   令を違憲無効と判断する際には必要不可欠というべきだ。

  岡部喜代子裁判官

    夫婦と嫡出子という婚姻共同体の保護には十分理由がるとしても、嫡出子を

   当然のように婚外子よりも優遇することの合理性は減少した。 

    全体として法律婚を尊重する意識が浸透しているからと言って、差別を設け

   ることは相当ではない。 

 

今後の民法改正の動き

  法務省は、民法の改正に向けた作業を進めることになり、民法900条の「いわゆ 

 る婚外子の相続分は、嫡出子の半分とする」という規定を削除されることになりま 

 す。 具体的には、今秋の臨時国会に改正案を提出することとなりますが、これ

 も立法の不作為として「税金返せ」とは言いませんが、国会議員も深く反省をして 

 貰わねばなりませんネ。

 

 

 

 

 

 

 

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