会社設立

 横浜の「アオヤギ行政書士事務所」が会社設立の手続きを解説致します、ご質問やご意見は下のフォームに記載のうえ、メールにて送信下さい。 なお、返信希望のご質問には貴メールアドレスの記載をお忘れなく。

 

 株式会社の設立方法には、発起設立募集設立の2通りありますが、一般的に発起設立で取締役会非設置会社を設立する方が多いので、今回は起業の企画者である発起人が会社設立時に発行する株式を全部引受ける発起設立で取締役会非設置会社について解説します。 取締役会非設置会社とは、会社役員の構成は、取締役会を置かずに1名または数名だけの会社です。 オーナーである株主が、組織・運営に関して全ての事を決定する権限を持つ、オーナー経営者むけの会社です。

 

 会社設立に必要な書類等

1.定款3部 法務局公証役場申請者各一部)

2.印鑑登録証明書(個人)2部 (公証役場法務局

3.払込証明書+預金通帳のコピー(ゆうちょ銀行は不可)

4.株式会社設立登記申請書+収入印紙貼付台紙

5.就任承諾書(取締役全員各々必要、印鑑登録証明書添付)

6.登記申請書の別紙(OCR用紙)

7.印鑑(改印)届書

8.設立時取締役(=発起人の場合不要)及び本店所在地の決議書(定款に番地ま

  で記載の場合は不要)

9.設立時代表取締役を選定したことを証する書類(一人取締役の場合は不要)

10.印鑑登録済みの印鑑

11.会社登録用代表取締役の印鑑 (インターネット販売で安価に作れます)

12.印鑑カード交付申請書(登録後でもよいが手間を省くため申請時に提出)

 

会社設立費用

1.定款認証時(公証役場)

  印紙代   4万円(電子定款の場合は不要)

  定款認証代 5万円

  定款謄本交付手数料 約2千円(枚数により異なる)

2.登記申請時(法務局)

  登録免許税 資本金x7/1000で算出、最低税額は15万円 

3.資本金 最低は1円からでも可能、一般的には100万円以上

4.会社代表取締役登録用印鑑代

 

会社設立時の注意点

1.同商号名、がつ同一本店所在地の類似商号調査

2.株式会社は、商号の中に「株式会社」を使用する

2.本店所在地の公証役場で定款の認証を受ける

3.本店所在地を管轄する法務局(地方法務局)に申請する

 

定款(旧来の紙定款)の作成方法

1.定款とは、会社の組織や株主の地位などを定めた根本規則のことです。

  会社を設立するには、発起人が定款を作成し、発起人全員が記名捺印します。

  作成された定款は公証人の認証を受けなければなりません。 現在、電子定款

  作成も可能です、印紙代4万円が不要になり節約できます。

2.会社設立に際しての原始定款は3部作成します。 公証人の認証を受けた定款は

  1部は公証役場の保管用、1部は会社設立登記申請用として法務局、1部は会社

  で原本として保管します。

3.定款記載事項は「絶対的記載事項」、「相対的記載事項」、「任意的記載事項」

  と3つに分類されます。

  1)絶対的記載事項会社法27条):必ず記載しなければならない事項

    ★ 目的

    ★ 商号

                  ①商号の中に株式会社の場合は、「株式会社」 合同会社の場合は、「合

       同会社」と必ずいれる。 

      ②会社名の英文の表示を決める事ができます。 NECの定款の1条は
      (商号)第一条 本会社は、日本電気株式会社と称し、英文では、NEC

       Corporationと表示する。         

    ★ 本店所在地

    ★ 設立に際して出資される財産の価格またはその最低額

    ★ 発起人の氏名又は名称及び住所(印鑑証明書の氏名住所と全く同じ)

 

  2)相対的記載事項会社法28条29条):定めがないと、その事項の効力が認め 

    られない事項

    ★ 変態設立事項

    ★ 基準日

    ★ 広告の方法

    ★ 剰余金配当に関る事項

    ★ 財産引受けに関する事項

    ★ 発起人が受ける報酬、その発起人の氏名

    ★ 会社の負担する設立に関する事項

    ★ 取締役の任期の短縮・伸長に関する事項

    ★ 取締役選任における累積投票制度の廃除に関する事項

    ★ 設立時の取締役、監査役、会計参与に関する事項

    ★ 株式の内容に関する事項

    ★ 株券の発行に関する事項

    ★ 監査役の監査範囲の限定に関する事項、その他多数

 

  任意的記載事項: 公序良俗に反しない限り、いかなる事項も記載出来ます

    が、一旦定款に記載すると、定款変更の手続きを取らない限り、その変更は

    出来ません。

    ★営業年度

    ★株式総会の招集方法

    ★役員の報酬に関する事項

    ★配当金の支払いに関する事項

    ★株主総会の議長

    ★役員の員数、その他多数

   

電子定款の作成方法 

1.先ず定款の記載内容を決める。

   紙の定款と同様に公証役場で内容のチェックを受ける。

2.PDF作成ソフトで電子定款を作成する。

   通常ワードで作成した定款原稿をPDFファイルに変換する。PDF変換ソフトは

   Adobe Acrobat Xスタンダード等を使用する。

3.住民基本台帳カードを取得する。

4.「公的個人認証サービスの電子証明書」を取得する。

   この電子証明書は実印の印鑑証明書に該当するもので

   電子証明書のサービスを受けるには住基カードを使って市区町村の窓口で登録

   発行の申請手続きを行う(これは印鑑登録に相当する)。

   申請の際は住基カード、身分を証明するもの(運転免許証など)、手数料500

   円を持参する。

   取得した電子証明書は個人の住基カードに保存される。 証明書を格納した後   

   の住基カードは実印が中に入っているのと同じ状態になるので、取扱いには要

   注意。

5.ICカードリーダ・ライタを準備する。

   公的個人認証サービス適合可能なICカードリーダ・ライタであることを確認。

6.電子署名プラグインソフトで定款(PDF)に署名する。

   前述のICカードリーダ・ライタで読み取った電子証明書を「電子署名プラグイ   

   ンソフトを使って電子定款(PDF)に埋め込みます。 このソフトは法務省の

   ホームページからダウンロードする、又は市販のソフト(ピスク等)がある。

7.公証役場と事前打ち合わせ、定款をプリントアウトして内容を再確認してもら 

  う。

8.電子申請を行う(電磁的記録の認証の嘱託)。

   「法務省オンライン申請システム」にユーザー登録を行い同システムを経由し

   て電子定款を指定公証人に送付(アップロード)する。

   この手続きを「電磁的記録の認証の嘱託という。 嘱託人が電磁的記録に指定  

   公証人が認証を与えることにより電磁的記録に付された電子署名が真正である

   こと(電子署名が作成名義人の意思に基づいて作成されたこと)が確実に証明

   されることになる。

   電子公証制度の手数料は公証役場の窓口で5万円納付する。

   電子文書のファイル名は半角英数字(31文字以内、拡張子含まず)でなければ

   システム上処理出来ないので要注意。

9.公証役場に行き定款の認証を受ける。

   公証人と前もって決めた日時に公証役場を訪問し、電子定款の認証を受ける。

   その時には次の書類などを持参する。

   ①新しいフロッピーディスク又はCD (公証役場によっては役場で用意)

   ②電子定款をプリントアウトしたもの2部 (公証役場によっては不要)

   ③発起人全員の印鑑証明書

   ④委任状(行政書士などが電子定款認証を行う場合のみ)

   ⑤認証手数料5万円

   ⑥証明手数料保存手数料など2千円程度

   ⑦身分証明書

   ⑧認印

10.法務局で法人設立登記申請をする。

   電子定款の認証が完了したら銀行に出資金を払い込み法務局で法人登記を申請

   する。 申請時の必要書類(登記申請書、就任承諾書、印鑑証明書、振り込みが

   あったことを証する書面、設立時代表取締役を選定したことを証する書面な 

   ど)は紙の定款と同じです。

    登記申請はオンラインで行うことも出来る、書類の不備などの確認のために

   も登記申請は直接法務局に行く方法を勧めます。

 

現物出資による会社設立

 現物出資とは
 本来、出資は金銭を原則とするが、例外的に金銭以外の財産をもって出資することも可能です。 これを現物出資といい、会社設立時、或いは増資時における金銭以外の財産の出資をいいます。

 

現物出資に関する会社法の規定

① 発起人は、定款に500万円を超える現物出資についての記載又は記録があるとき  

      は、定款の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対

      し、検査役の選任の申立てをしなければならない(33)。

② 設立時取締役は、その選任後遅滞なく、500万円を超えない現物出資財産等を調 

      査しなければならない(46条)。

③ 株式会社の設立に際し現物出資できるのは、発起人に限られる(34条63条)。

④ 出資された財産等の価額が不足する場合の責任(52条

 

現物出資の対象となりえるもの

① 土地・建物などの不動産

② 機械、自動車、原材料や棚在庫品など

③ 有価証券(株券、国債、社債、地方債など)

④ 代金請求権、家賃請求権などの債権

⑤ 営業権、漁業権

⑥ 工場所有権、特許権、著作権など、かたちのない財産

 

現物出資の価格の決め方

 現物出資の価格の決め方と注意点は下記のとおりです。

 ① 現物の価格は時価(出資する時の価格=価値)
   出資するものが、モノである場合は新品の時の購入価格ではなく、現在の相場価 
       格を定款に記載します。
       現在の相場価格は、yahooオークションや中古自動車のHPなどで、出資 しよう
       とするモノの現在の価値を調べて下さい。
②  出資する現物の価格が、時価を超えてしまうと、出資した側に譲渡税がかかりま 
       す。   例えば、10万円の価値の車を100万円で現物出資したとすると、その差額
       の90 万円に対して譲渡税がかかります。
   ですから、500万円以下であれば、添付書類が不要な現物出資ですが、資本金を
       上げたいなどの理由で高額につけてしまうと譲渡税がかかる場合があるので、
       注意が必要です。

③  出資したモノは耐用年数の範囲内で減価償却出来るので、税金対策にもなりま

       す。   10万円以上から30万円までの資産は少額資産として認められます。   

    また、20万円未満の減価償却資産は一括して3年間で均等に償却することも

   できます。    ただし、中小企業と大企業ではその資産の価格によって税法が異

       なります。   ですから、現物出資するものの価格を決定し兼ねる時は、税金面で

       有利な金額である30万円以内の少額資産の範囲内に設定するのもひとつの考え方

       です。

 

財産引継書の作成

 財産引継書は、2通作成し、1通は会社の保管用、1通は設立登記の際の調査報告書商業登記法第47条第2項第3項イ)の附属書類として法務局に提出します。

 

財産引継書のサンプル

         財産引継書

現物出資の目的たる財産の表示

(現物出資する財産の種類)

(具体的な商品名) ○○○○株式会社 ××××

(商品固有のシリアルナンバー等) 製造番号○○××△△

   価格合計 金200万円也

以上、私所有の上記財産を現物出資として給付します。

                      平成25年10月○日
                      神奈川県横浜市中区本牧1-1-1
                       発起人 行政太郎 印

株式会社××××御中
 

調査報告書の作成

 現物出資の対象となる財産が引き渡されたとき、設立時取締役(監査役設置会社であるときは設立時取締役及び設立時監査役)は、その選任後遅滞なく、現物出資の対象となる財産について、定款に記載されている価額が相当であるか調査しなければなりません(会社法第46条第1項)。

 そして、調査結果が相当である場合には、調査報告書を作成し、設立登記申請書の添付書面として提出します(商業登記法第47条第2項第3項イ)。

 

調査報告書のサンプル

             現物出資報告書

私は平成25年10月○日、株式会社○○○の取締役に選任されましたので、会社法第46条の規定に基づき調査致しました。 その結果は下記のとおり報告致します。

調査事項

1.定款に記載をされた現物出資財産の価格に関する事項(会社法第33条第10項第1   

  号及び第2号に該当する事項)

  定款に定めた、現物出資をする者は発起人○〇○〇であり、出資の目的たる財産 

  その価格、並びにこれに対し割当てる設立時発行株式の種類及び数は下記の通り

  です。

  イ. 乗用車トヨタクラウンアスリート平成23年式 車体番号○〇○〇

     この価格 180万円

     これに対し割当てる設立時発行株式 普通株式 180株

  ロ. パソコン 東芝株式会社 平成25年生FH-999、製造蛮行○○

     この価格 20万円

     これに対し割当てる設立時発行株式 普通株式 20株

① 上記イについては、時価金200万円と見積もられるべきところ、定款に記載した評 

  価額はその十分の九の金180万円であり、これに対し割当てる設立時発行株式の数

  は180株であることから、当該定款の定めは正当なものと認めます。

② 上記ロに就き、当該市場価格は20万円であり、定款に記載した評価額はその一分 

  の一であり、これに対し割当てる設立時発行株式の数は50額であることから、

  当該定款の定めは正当なものと認めます。

2.発起人○〇○〇の引受けに係る200株について、平成25年10月○日現物出資の目的 

  たる財産の給付があったことは、別紙財産引継書により認めることが出来ます。

3.その他、設立手続きが法令または定款に違反している事項は認められません。

上記のとおり会社法の規定に従い報告致します。

平成25年10月○日

株式会社○○○

設立時取締役○○○印

  

現物出資の魅力
   資金不足の場合でも金銭以外の財産を有する場合には現物出資により設立、増資が可能となります。

現物出資の問題点
   現物出資された財産が過大評価されたなら、その評価額に相当する現実の資本が会社に確保されたことにならず、資本の空洞化をもたらし、又は資本充実責任の原則に反し会社を害するおそれがあります。このように、出資者による制度の悪用の可能性も高いことから、「現物出資」には、下記の通りの規制がかけれられています。

検査役の調査
 この場合、原則として財産の評価について裁判所専任の検査役を専任してもらい調査を受ける必要があります。 しかし検査役の調査は長期間を要し、費用も多額になることから下記のような例外が認められています。

例外規定
① 現物出資者に割り当てる株式の総数が発行済株式総数の1/10を超えないとき
② 現物出資する財産につき募集事項として定めた価額の総額が、500万円を超えない  

 とき
③ 財産が市場価格のある有価証券で、その有価証券について募集事項として定めた価

  額がその市場価格を超えないとき
④ 現物出資する財産につき募集事項として定めた価額が相当であることについて、

    護士、監査法人、税理士、公認会計士 の証明を受けたとき。 現物出資財産の価額

  が500万円を超える場合でも、上記の弁護士等の評価証明書があれば、検査役の調

  査は不要となりました。

⑤ 現物出資する財産がその株式会社に対する金銭債権(返済期が到来しているもの)

    であって、当該金銭債権につき募集事項として定めた価額が当該金銭債権に係るそ

    の株式会社の負債の帳簿価額を超えないと現物出資財産の価額が500万円以下の場 

  合には、検査役の調査も弁護士の評価も不要です。 

       

不動産鑑定評価の必要性
   上記④ような場合に検査役の検査に替えて弁護士、公認会計士、税理士の現物出資の財産に対する評価証明の発行を持って検査役の調査に替えることが出来ます。
この場合に不動産を現物出資する場合には証明に加えて不動産鑑定士の評価証明書、即ち不動産鑑定評価書が必要となります。   何故なら不動産は個別性が強く適正な価格を把握するためには不動産鑑定評価によらなければならないからです

 

現物出資デメリット
   デメリットこそ重要な情報であるということ、そしてメリットは場合によっては、デメリットを更に上回るからなのです。
1.現物出資をした後は手続が必要
 現物出資とは、会社から株式を与えられる代わりに、個人所有の財産が会社所有の財産になるということです。
 個人から現物出資として給付された財産は、会社のものとなり、個人に返還する義務はありません。
 このように、財産の所有権が個人から会社(法人)に移転しますので、その財産によっては所有権移転の手続が必要になるものがあります。 具体的には不動産(土地・建物)や動産では車などです。
 不動産では所有権移転登記が必要になりますし、車についても名義変更手続が必要になります。
 これらの手続は登記前に行う必要はありませんが、登記後には行わなければなりません。
 これら手続には多少の費用もかかりますし、専門家に依頼すれば専門家への報酬も必要になります。
 こういった事を考えますと、出資する現物財産によっては、現金出資のみによる通常の会社設立に比べて、行わなければならない手続が増える場合があります。
 これが手続き上のデメリットです。

2.現物出資には税金がかかる
 また、上記の手続の話にも関連しますが、現物出資には税金がかかる場合があります。 先ほどの手続でいいますと、不動産の場合は所有権移転登記を行いますので、まず登録免許税が必要になります。 そして、不動産を取得した会社(法人)には不動産取得税や固定資産税がかかってきます。
 車についても同様で、車種や年式によっては自動車税や自動車取得税が会社(法人)にかかってきます。
 また、現物出資を行った個人(株主)に対しては譲渡所得税がかかる場合があります。 譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいます。
会社(法人)に対する現物出資も、その対価として株式(持分)を取得するわけですから、通常の売買と同様、ここでいう譲渡所得にあたります。
 譲渡所得の対象となる資産としては、土地、建物、機械器具、ゴルフ会員権、特許権、著作権、特定の有価証券などがあります。 なお、貸付金や売掛金はなどの金銭債権は対象とはなりません。
 もちろん個々の財産の状況によって、税額や税金の有無も変わってきますが、少なくとも現物出資をすることによって、一時的にも手続が発生したり、会社・個人双方に税金負担が発生する場合があるということを充分念頭に置いておく必要があります。
 

現物出資の定款記載例

<現物出資>この価格 180万円

第25条 当会社の設立に際して現物出資をする者の氏名、出資の目的である財産、そ

    の価格及びこれに対して割当てる株式数は、次の通りです。

      (1) 出資者 発起人 ○○○○

    (2) 出資財産及びその価額

                 イ. 乗用車トヨタクラウンアスリート平成23年式 車体番号○〇○〇

                この価格 180万円

                これに対し割当てる設立時発行株式 普通株式 180株

             ロ. パソコン 東芝株式会社 平成25年生FH-999、製造蛮行○○

                この価格 20万円

                  これに対し割当てる設立時発行株式 普通株式 20株