成年後見制度(3類型)

成年後見制度は成年後見保佐補助の3類型があります。

 

成年後見

 

1.後見開始の審判

   精神上の障害により判断能力(事理弁識能力)を欠く常況にある者を対象とし

  ます(民法7条)。 後見開始の審判の請求権者は本人、配偶者、4親等以内の

  親族、検察官、市町村長(老祉法32条他)等です。 家庭裁判所の後見開始の

  審判により後見人を付すとの審判を受けたものを成年被後見人、本人に代わって

  法律行為を行う者として選任された者を成年後見人と呼びます(民法8条)。 

  家庭裁判所は後見開始の審判をするときは職権で後見人を選任します。 後見開

  始の審判については請求権者の請求に基づいてなされますが、成年後見人の選任

  は家庭裁判所の職権によります。

 

2.成年後見人の権能と成年被後見人の法律行為 

   成年後見人は成年被後見人について広範な代理権(民法859条1項)と取消権

  (民法120条1項)、財産管理権(民法859条)、療養看護義務(民法858条)を

  持ちます。 なお、成年後見人が成年被後見人に代わってその住居用の建物・敷

  地を売却・賃貸借の開始や解除または抵当権の設定その他これらに準ずる処分を

  するには家庭裁判所の許可が要ります(民法859条の3)。 取消権について、

  日常生活に関する行為については取り消すことが出来ません。 また、身分法上

  の行為や治療行為などの事実行為に関する同意など、本人の意思のみによって決

  めるべき(一身専属的)事項についても取消権や代理権は行使出来ません。 成

  年後見人には保佐人や補助人と違い同意権は無いと解釈されています。

 

3.成年後見人の義務

   成年後見人は、成年被後見人の生活・療養看護・財産管理事務を行うに当た

  り、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮

  しなければなりません(民法858条)。

 

4.利益相反行為

   成年後見人と成年被後見人との利益相反行為について、成年後見人は特別代理

  人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。 但し、後見監督

  人が選任されている場合には後見監督人によります(民法860条但書き)。

 

5.後見監督人

   家庭裁判所は必要があると認めるときは、成年被後見人、その親族もしくは成

  年後見人の請求または職権により後見監督人を選任することができます。 後見

  監督人の職務については民法851条・863条等に規定があり、後見監督人が選任さ

  れている場合には特にその同意を要する場合(民法864条・865条)があります。

 

 

保佐

 

1.保佐開始の審判

   精神上の障害により判断能力が「著しく不十分な」者を対象とします(民法11 

  条本文)。 保佐開始の審判の請求権者は本人、配偶者、4親等以内の親族、後

  見人、後見監督人、補助人、補助監督人、検察庁、市町村長(老祉法32条など)

  などです。

 

2.保佐人の権能と被保佐人の法律行為

   保佐人は民法13条1項に定める重要な財産行為について同意権及び取消権

  認を有します。 被保佐人の居住用の建物などの売却、賃貸借の解除などは被

  後見人と同様に家庭裁判所の許可が要ります。 保佐人の同意を要するとされた

  行為について保佐人が被保佐人の利益を害する恐れがないにも拘らず同意しない

  ときは、家庭裁判所は被保佐人の請求により保佐人の同意に代わる許可を与える

  事が出来ます。  被保佐人が保佐人の同意を要するとされた法律行為を、保佐人

  の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ずに行った場合は、当該法律行為

  を取り消すことが出来ます。

  代理権は、保佐開始の審判の請求権者または保佐人もしくは保佐監督人の請求 

  (本人以外が請求する場合には本人の同意も必要)に基づいて代理権付与の審判 

  を受けている場合には、申し立てられた特定の法律行為についてのみ保佐人が有

  します。 なお、保佐人は身分法上の行為など、本人の意思のみによって決める

  べき(一身専属的)事項については同意権・取消権・代理権は行使出来ません。

 

3.保佐人の義務

   保佐人が保佐の事務を行うにあたっては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、そ

  の心身状態及び生活状況に配慮しなければならない義務を負います(民法876条

  の5第1項)。

 

4.利益相反行為

   保佐人またはその代理人と被保佐人との利益相反行為について、保佐人は臨時 

  保佐人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。 但し、保佐 

  監督人が選任されている場合には保佐監督人によります。

 

5.保佐監督人

   家庭裁判所は必要があると認められるときは、被保佐人、その親族もしくは保 

   佐人の請求または職権により保佐監督人を選任することが出来る。 保佐監督 

  人の職務権限については後見監督人の規定が準用されます(民法876条の2第2 

  項)。 保佐監督人の職務権限については後見監督人の規定が準用されます。 

    

 

 補助

 

1.補助開始の審判

   精神上の障害により判断能力が「不十分な」者のうち、後見や保佐の程度に至 

  らない軽度の状態にある者を対象とします(民法15条1項本文)。 補助開始の

  請求権者は本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐 

  監督人、検察官または市町村長(老福法32条他)です。 家庭裁判所の補助開始

  の審判により補助人を付すとの審判を受けたものを被補助人、本人の行う法律行 

  為を補助するものとして選任された者を補助人と呼ぶ。 補助は事理弁識能力の 

  低下が後見や保佐の程度に至らない軽度の状態にある者を対象としており、自己 

  決定の尊重の観点から、後見・保佐とは異なり本人の申立て又は同意を審判の要

  件とします。  補助開始の審判には必ず併せて民法17条第1項の同意権付与の審 

  判あるいは民法876条9の代理権付与の審判の一方又は双方の審判がなされます。  

  補助人の権能は補助開始の審判を基礎としてなされる同意権付与の審判や代理権 

  付与の審判の組合せによって内容が定まります。 従って、被補助人に同意権付

      与の審判と代理権付与の審判の双方がなされている場合にはその補助人に同意

      権・取消権・代理権が認められ、同意権付与の審判のみの場合には同意権・取消

      権のみが、代理権付与の審判のみの場合には代理権のみが認められることになり

      ます。 但し、いずれの場合も身分法上の行為など、本人の意思のみによって決

      めるべき(一身専属的)事項については同意見・取消権・代理権を行使できませ

      ん。 なお、補助人が被補助人に代わってその居住用の建物・敷地について売

      却、賃貸借、賃貸借の解除または抵当権の設定その他これらに準ずる処分をする 

  には、後見人・保佐人と同様に家庭裁判所の許可が要ります。

 

2.補助人の義務

   補助人が補助の事務を行うにあったては、被補助人の意思を尊重し、かつ、そ 

  の心身状態及び生活状況に配慮しなければならない義務を負います。

 

3.利益相反行為

   補助人またはその代理人との利益相反行為について、補助人は臨時補助人を選

  任することを家庭裁判所に請求しなければならない。 ただし、補助監督人が選

  任されている場合は補助監督人によることになります。

 

4.補助監督人

   家庭裁判所は必要があると認めるときは被補助人、その親族もしくは補助人の 

  請求または職権により補助監督人を選任することが出来ます。 補助監督人の職

  務権限については後見監督人の規定が準用されます。

 

5.同意見付与の審判

   同意権付与の審判の請求権者は補助開始の審判請求権者または補助人もしくは

  補助監督人です。 市町村長も65歳以上の者、知的障害者、精神障害者につきそ

  の福祉を図るため特に必要があると認められるときは同意権付与の審判を請求す 

  ることが出来るとされています(老祉法32条他)。 本人以外の者の請求によ 

  る場合に本人の同意がなければならないのは保佐開始の審判と同じです。

  被補助人に同意権付与の審判がなされている場合には、被補助人は民法13条1

  項に列挙されている行為の一部の法律行為について補助人の同意を要します。

  補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害

  する恐れがないにも拘らず同意をしないときは家庭裁判所は被補助人の請求によ

  り補助人の同意に代わる許可を与えることが出来ます。 被補助人が補助人の同

  意を要するとされた法律行為を補助人の同意またはこれに代わる家庭裁判所の許

  可を得ずに行った場合は、当該法律行為を取り消すことが出来ます。

 

6.代理権付与の審判

   代理権付与の審判の請求権者は補助開始の審判の請求権者または補助人もしく  

  は補助監督人である。 市町村長は同意権付与の審判と全く同じです。 被補助

  人に理権付与の審判がなされている場合には、特定の法律行為について補助人 

  に代理権が付与されます。 但し、被補助人本人以外の請求によるときは本人の 

  同意が要ります。

 

 

 

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コメント: 1
  • #1

    Major Duhart (水曜日, 01 2月 2017 02:34)


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